ない借金返済|第3 当裁判所の判断 1 争点⒧について (1) Dの死亡原因

借金返済の判断 a 市立病院にで心肺停止になった可能性もあるとされている。
死因
肺塞栓
Pa


PaCO2が低下して いないこと,発症の経緯(ギプスをはずした直後の発症),超音波診断 でDsign(+)とあり右心不全がみられることから,肺梗塞の疑 いは強いといえる,しかし,確定診断に必要な,RIを用いた肺血流 スキャン,肺動脈造影,死後の病理解剖のいずれも実施されておらず, 確定診断は不可能であるとされている。
b 東北大学病院循環器内科I医師作成の平成19年2月5日付け私的 鑑定書(以下「I鑑定意見」という。
)によれば,Dの死因について, 臨床症状と心エコーのDsignからは,肺塞栓症と推定することは 可能であるが,腹痛の存在やトロポニンT陽性など,肺塞栓症では通 常認めない事柄も存在することから,胸部CTや,肺動脈造影,もし くは病理解剖にて診断が確定していない限り,死因を特定することは できない,とされている。
イ(ア) 以上の認定事実によれば,Dの主治医・担当医であるF医師・G医 師が,臨床症状や心エコーに基づいてDの死因を肺梗塞(肺塞栓)疑い と診断していること,肺梗塞(肺塞栓)疑いにとどまっているのは確定 診断に必要な各種検査を実施できなかったからに過ぎず,他に何らかの 具体的疾患の可能性が想定されているわけではないこと,各鑑定意見も 概ね確定診断はできないが肺梗塞(肺塞栓)と推定されるというもので あることの各事実が認められ,これらの事実からすれば,Dの死因は肺 梗塞(肺塞栓症)であると推定するのが合理的であり,6月25日午後 6時ころに見られたDの症状も同様に肺塞栓症に基づくものであったと 推定するのが合理的である。
そして全証拠に照らしてもこの推定を覆す 事情はうかがわれない。
14 したがって,Dの死亡原因は肺梗塞(肺塞栓症)であり,6月25日 午後6時ころに見られたDの症状は肺塞栓症に基づくものであったと認 められる。
(2) 診断上の過失について ア前提事実,証拠(甲A2ないし4,10,B1の1ないし4,5ないし 9,乙A1,2,B1ないし8,10ないし15,19ないし23,25, 証人E,原告A本人,被告本人〔ただし,後記認定と異なる部分を除く〕) 及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,この認定を覆すに足 りる証拠はない。
(ア) 現在の肺塞栓症に関する一般的知見 a 肺塞栓症の臨床症状としては,自覚症状として呼吸困難,胸痛,血 痰,冷や汗等,他覚症状としてチアノーゼ(低酸素血症),頻呼吸,頻 脈,低血圧等がみられる。
そして,通常腹痛という症状はみられない。
また,PaO2の低下はもっとも重要な所見であり,PaCO2も過 換気のために低下することが多い。
もっとも,いずれも非特異的な症状であって,確定診断のためには 画像診断が極めて重要となる。
b そして,静脈血栓塞栓症の危険因子として,下肢ギプス包帯固定, 肥満,ピルの服用等が挙げられる。
(イ) 6月当時の肺塞栓症に関する一般的知見に関して a 平成11年3月1日発行の「ホーム・メディカ家庭医学館」に肺塞 栓症についての解説が掲載されており,症状として突然の呼吸困難, 胸の痛み,血液のまじったたん,胸部の不快感等が記載されている。
また,肺塞栓症の原因に関して,下肢(脚)の静脈にできた血栓が, 肺まで運ばれて肺動脈をつまらせるものが最も多いこと,一週間以上 ベッドの上で安静にしていたとか,長時間座ったままでいた場合,圧 15 迫されて下肢の血流の流れが悪くなり血栓ができやすくなることが記 載されている。
b 肥満体型であることは,古くから肺塞栓症の危険因子とされていた。
c ピルが血栓発生のリスクを増大させることは古くから最大の問題点 とされており,平成12年7月発刊の「日産婦誌」52巻7号や平成 16年5月発刊の「臨婦産」58巻5号に同趣旨の内容が記載されて いる。
d 「麻酔」2001年3月号に,駆血帯解除時に発生した重症肺梗塞 症の1症例が紹介されている。
考察として,今回は軟部組織に対する 手術であったこと,駆血時間が約30分と短かったこと,術前に肺梗 塞を疑わせる既往があったこと,術前に下肢をギプスで固定されてい たこと,患者の年齢,性別,体型などを総合すると,深部静脈血栓は 術前にすでに形成されていた可能性が高いとの趣旨の内容が記載され ている。
e 「Therapeutic Research」vol.24 n o.4 2003に,急性型から慢性肺血栓塞栓症性肺高血圧症に移 行した1例が紹介されている。
患者は,平成13年3月,左アキレス 腱断裂のため2ヶ月間ギプス固定をした。
この間一時左足の腫脹・疼 痛がみられ,呼吸困難もあった。
そして,平成14年2月14日に, 肺血栓塞栓症と診断された。
f 「整形・災害外科」2003年5月号に,アキレス腱断裂後の保存 的治療中に肺塞栓症を発症した2例が紹介されている。
1つは,平成 13年7月21日に左アキレス腱を断裂し,膝下ギプス固定をしたが, 同年8月8日になって,胸痛,一時的な失神がみられ,その7日後に 再度胸痛が出現したというものであり,CT検査の結果,肺塞栓症と 診断された。


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もう1つは,平成14年3月6日に左アキレス腱を断裂 16 し,膝上ギプス固定をしたが,その後3回息苦しくなったことがあり, 同年3月19日になって,動悸,呼吸困難,一時的な意識障害を起こ したというものであり,CT検査の結果,肺塞栓症と診断された。
g 1999年から宮城県肺血管疾患対策協議会において,宮城県にお ける肺塞栓症の発生状況を調査している。
2004年に発行された上 記調査結果によると,肺塞栓症の誘因と深部静脈血栓の陽性率は,肥 満(BMI>24)は55.6%,交通事故後,アキレス腱断裂は1 0.0%であった。
h 東北大学整形外科准教授J作成の「ギプス固定(主にアキレス腱断 裂)と肺梗塞発症についての医療水準に関する仙台市基幹病院への調 査」と題するアンケート結果は以下のとおりである。
(a) 質問1に関して 本件ガイドライン公表以前にアキレス腱断裂でギプス固定をした 外来通院患者が経過中に肺塞栓のような重篤な血栓症を発症した経 験はあるか。
回答 W病院K医師 :ない。
X病院L医師 :ない。
Y病院M医師 :ない。
Z病院N医師 :ない。
(b) 質問2に関して 本件ガイドライン公表以前に所属学会等でギプス固定に合併して 17 起こる血栓症についての注意喚起等を目にしたことはあるか。
回答 K医師:ない L医師:ない M医師:平成16年6月30日付けで本件ガイドライン作成 委員会が発行したガイドラインをみた。
N医師:ない (c) 質問3に関して 本件ガイドライン公表以前に外来通院患者のギプス固定に際して 深部静脈血栓について何らかの予防法(説明を含む)を講じていた か,それはどのような予防法か。
回答 K医師:講じていた。
できるだけ四肢を動かすこと。
L医師:講じていなかった。
M医師:講じていなかった。
N医師:講じていなかった。
(d) 質問4に関して 本件ガイドライン公表以前にBMI30以上の肥満患者に下肢ギ プスを施行する際に特に何らかの血栓予防策を特に意識したことは あるか。
回答 K医師:なかった。
L医師:なかった。
M医師:ほとんどなかった。
N医師:ほとんどなかった。
i 本件ガイドラインには,下肢ギプス包帯固定後の,静脈造影により 18 診断される深部静脈血栓症の発生率は約4〜30%と報告され,強い 静脈血栓塞栓症の危険因子となる旨が記載されている。
そして,下肢 手術の肺塞栓症のリスクレベルは中リスクとされ,下肢ギプス包帯固 定は,強い付加的な危険因子,肥満,エストロゲン治療は弱い付加的 な危険因子とされている。


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症状
症状が, 急に,過呼吸・低酸素血症からショック・心肺停止となる病態であ ることからは,肺の血管が詰まり,急激に肺から右心系の高血圧を 招く肺塞栓症(肺梗塞)が疑われた。 (b) 確定診断ではなく疑いにとどまったのは,肺塞栓症(肺梗塞) の確定診断は?肺血管造影により肺動脈内に造影不良域(血栓閉 鎖)を認めることを証明する,?肺血流シンチグラフィーで集積欠 損域を認める,?剖検で肺動脈本幹(主幹部)内に血栓の存在,肺 組織の壊死像を認める,のいずれかが必要であるところ,Dの場合, 市立病院で蘇生後も自発呼吸,意識レベルの回復なく人工心肺補助 下であり,?,?の検査が施行できる全身状態ではなかったこと, また,?は家族の希望により施行しなかったことから確定診断でき なかったことによる。 (イ) 各種鑑定意見 a 名古屋大学名誉教授H医師作成の平成18年9月12日付け鑑定意 13 見書(以下,H医師作成の平成18年12月1日付け鑑定意見書と併 せて「H鑑定意見」という。